近藤貴馬(西喜商店 四代目)のブログ

京都の老舗青果店、西喜商店の四代目。㈱セガにて6年間営業職を務めた後、㈱地元カンパニーに入社。「地元のギフト」事業の全国展開を担当。営業のみにとどまらず地域に関わる様々な業務をこなし、2015年に京都にUターン。現在はリノベした京町家に住みながら、西喜商店の事業拡大に取り組む。

食品ロス削減推進法可決ニュースのコメント欄について

ヤフーニュースのトップに、食品ロス削減推進法可決のニュースが来てました。

headlines.yahoo.co.jp

具体的にどうなるのかというと、国が責任持って方針決めるので、自治体さん企業さん具体的な実行策よろしくね、ということのようですが、そもそも国が全会一致でこの問題に本腰を入れたということの意義がとてつもなく大きいというのが、専門家の方の見解ですね。

ところで、このブログを書こうと思った理由ですが、ヤフコメにげんなりしたからです。

興味がある方は見に行ってください。論調的に、どうして食べられるものを廃棄するのかわからない。廃棄するくらいなら半額、いやもっと割り引いてでも売り切るべきだという流れです。

それですべてのフードロスの問題が解決するのであればすべての事業者がそうしているのだろうと思います。しかし現実はそうではありません。小売店の現場で売られているすべての商品は仕入原価がかかっています。商売をしているすべての人はお金儲けをしたいと思っているわけですから、仕入れ原価よりも高く売りたいのです。

しかしいつ誰が買いに来るかわからない小売商売をしていて需要と供給の量を完全にバランスさせることは不可能なので、どうしても在庫を抱えることになります。これが雑貨のように腐らないものであればある程度コントロールも可能ですが、生鮮品はとにかく腐敗との勝負ですので、腐る前に売るか、腐らせて捨てるかしかないわけです。

それで、どうせ捨てるくらいなら安くして少しでも金に変えてしまおうというのが、見切り品、おつとめ品の考え方です。仕事帰りに夜間のスーパーの惣菜コーナーを狙っている人も多くいらっしゃると思います。僕も一人暮らししているころは狙ってました。

これをもっとどんどんやればいいじゃんというのが素人考えですが、これをもっとどんどんやってしまうとどうなるか。

 

【見切り品、おつとめ品のメリット】

・食品廃棄を減らせる。

・廃棄処分予定の商品が少しでも現金化できる。

【見切り品、おつとめ品のデメリット】

・安売り商品だけを買いに来る顧客が増える。

 ⇒赤字商品だけが売れるようになり、利益が上がらなくなる。

・安い粗悪品を売っている店という悪いブランドイメージが定着する。

 

短期的な視点ではメリットの方が大きいのですが、長期的な視点ではデメリットの方が大きく、あんまりやりすぎて店のイメージが悪くなることの方を嫌う経営者は多いでしょう。

それだったらある程度廃棄する分も見込んで利益をつけて、売れ残りは廃棄するという考え方になるのは八百屋視点でも極自然な流れです。

以前もブログに書いたことがあるのですが、一時キャベツ余りの時期に一玉50円で売っていたところ、そのキャベツばかりを買う客が現れました。最初は気前よく売っていたのですが、毎日毎日

「50円のキャベツありますか?」と言われ続けて辟易としました。そしてなくなったらその客は店に来なくなりました。

うちとしては、その客に対しては赤字でキャベツを売っただけで僕の労働力はマイナス計算ということです。こんなことが続けば、安売りするより捨てたほうがマシと思うのは当然です。

識者の方がコメントされていますが、販売側が廃棄削減の努力をすることはもちろんのことですが、とにかく消費者側の意識が変わらないことには根本解決への道のりは程遠いというのが零細八百屋視点の見解です。

スーパーでも賞味期限の近いものから買う、見切り品の野菜も使えそうなものは買う、など積極的な消費行動が根本解決への一番の近道なのでは無いでしょうか。

 

※追記

キャベツの話は、見切り品の野菜を買わないでという意味では無いです。むしろ積極的に買ってもらう方がうれしいです。要はその人の食べ物やお店に対する意識の問題です。伝わりますでしょうか。