近藤貴馬(西喜商店 四代目)のブログ

京都の老舗青果店、西喜商店の四代目。㈱セガにて6年間営業職を務めた後、㈱地元カンパニーに入社。「地元のギフト」事業の全国展開を担当。営業のみにとどまらず地域に関わる様々な業務をこなし、2015年に京都にUターン。現在はリノベした京町家に住みながら、西喜商店の事業拡大に取り組む。

西喜商店の現在地2026夏〜本当に跡を継ぐということ〜

 

●大変だった2025年

2025年、西喜商店は実はとても大変でした。

・約4年働いてくれた社員が、次のステップに進むために4月に退職することになった。

・父親が2月に引退することになった。

これが同じ時期に重なることになりました。

僕と父親の関係については前のブログを遡ってもらいたいのですが、とにかくようやく引退を決意してくれたのは精神的には本当に良いものの、それでも月80万円程度の売上を作っていたので、年間約1000万円の売上の穴埋めをしないといけないわけです。
これをどうやって埋めるのか、埋めていけるのかを考え始めていた時に、社員が退職することになったのでさてどうしようかな〜となかなか悩む日々でした。

ありがたいことに、BtoBの配達事業は取引先が増え続けている状況ではあったので兎にも角にも人を増やさないと事業が回らない。果たしてこの零細八百屋で働いてくれる人は見つかるのか。

採用は小規模事業を営んでいる人にとって、最大の悩みだと思います。給与待遇面では大企業に勝てるわけは無いので、やりがいみたいな精神論で戦うしか無い。そんなにうまくいくのか。行きました。奇跡でした。この顛末も前の記事を見てください。

●店のビジョンを決めきったのが良かった

採用に当たり、西喜商店がどんな八百屋になるべきか、ビジョンを決めきるべきだと思いました。これまでは父親の存在が邪魔でそれができませんでしたが、引退を機にそれができました。(この辺のメンタリティはきっとアトツギにしかわからない)

くらしを支える”まちのかかりつけ八百屋”を目指す

この言葉が作れたことが父親の引退と新規採用が重なった大きな財産となりました。西喜商店は、栽培方法や品種などの理想を川上から押し付けるのではなく、お客さまに選択肢を提示し、そのありとあらゆる要望に応え続ける、という道を選びました。10年八百屋をやって、零細八百屋が生き延びていくにはこの道しかないと思いました。そしてこの言葉が刺さったのかどうかはわかりませんが、とてもこのビジョンに合った仲間をを見つけることができました。採用ページにビジョンについて書ききったことで充実した文章を作れたことも大きいと思っています。

 

●付随してアルバイトスタッフが充実した

採用記事を充実させることで、アルバイトスタッフの採用も充実しました。社員としては働けないけど、アルバイトなら働いてみたいという方を複数名採用することができました。取引商談が常に1~2件/月ある状況で、どのタイミングで採用を決めていくかも零細事業者にはとても難しい判断ですが、社員採用の告知を出したことで、西喜商店自体が採用に前向きであるイメージを発信できていたことも大きいのではないかと思います。

●ところが不安定な売上

先に述べた父親いなくなった分の年間1000万円の穴埋めについて、これができたか出きってないかでいうと2025年はできませんでした。が、経営者としては悲観するほどではなく、上記の通り取引は増え続けていたので、このままいけば盛り返せるなという楽観的なメンタルになってきました。

 

●希望が見えてきた2026年

2025年は体制づくりに明け暮れたと言っても良かったと思います。そして築き上げてきた体制で2026年以下に売上を増やしていくかと考える暇もなく、取引依頼が年明けに急増。これは毎年の傾向ではあるのですが(春に向けて、新店オープンや、取引先切り替えの検討がある時期)、社員とバイトの体制を強化していたので、取りこぼし無く殆ど全て受けきることができたのが本当に大きかったです。(2025年は、採用が固まるまでは受注できず取りこぼした案件があった)3月以降は大きめの商談も決まり、バイトも2名増員。社員1名、バイト5名、おかん1名の安定体制で刈取りの時期に入ることできました。売上も2025年のロス分は完全に挽回し増加傾向を維持しています。

 

●結論、及び零細跡継ぎ事業者としての教訓

この結論が書きたかったから、この記事を書きました。

事業承継、親子関係で悩む跡継ぎ仲間に伝えたい。

「引退が見えている先代経営者がダラダラ店(会社)に残っているメリットはない。早期引退して、跡継ぎがビジョンを定め、採用をすることで未来が切り開かれていく」

まじで。

過渡期は本当に苦しいですが、乗り越えた先にきっと明るい未来があると伝えたい。

もちろんここでの油断は本当にヤバいのでずっと気を引き締めていかないといけない心の苦しさはあるのですが、不毛な親子関係に悩むよりは本当に楽、そして明るい未来がきっと見えます。

悩んでいる跡継ぎの方とまた話ができれば嬉しいです。

 

ということで、西喜商店2026年夏は、明るい未来が見えている状態です。心持ちとしては、社員、スタッフへの感謝が第一!という夏です。

 

西喜商店の現在地2024夏

まもなく西喜商店を継いで、八百屋になって9年となります。

売上も安定しており、社員の海部と二人三脚でがんばっております。

年度初めに書いた「京都で一番イケてる八百屋」と言われる回数を増やすことという目標。

書いたときは威勢も良かったのですが、いざ意識しだすとその難しさに悩んでいました。

 

今西喜商店のビジネスモデルは80%がBtoBです。

保育園や飲食店、児童養護施設等への配達です。

まだ件数が少ないときは良かったのですが今や30件を超える取引先があるので

必然的に求められる仕事は、注文に対していかに的確に応えるか、になります。

特に飲食店から求められる注文は「美味しい野菜」ではありません。

美味しいことは大前提として、「その上で」求められることは

 

・自分たちの料理に必要なサイズ(大きいものが良ければ小さいものが良いときもあれば、「ちょうど良いサイズ」が良いときもある。)

・自分たちの料理に合う品種(じゃがいもの男爵、メークインの精度ではない、もっと細かい精度)

・自分たちの料理に合う見た目(傷があっても良いときと悪い時がある。曲がっていても良いときと悪い時がある)

・自分たちの予算に合う価格

・とにかく欠品しない、傷んでいない。

・注文した内容、数量を間違えない

 

これは小売業としては当たり前ともいえることですが、

とにかく野菜や果物等のは品質劣化が早く、在庫の保存にも気を使う必要があるし

(特にトマトや果物の熟度コントロールは気を使っています)

当たり前のこと当たり前にするのがとても難しい商売です。

特に年々暑くなるこの夏は品物を揃えるだけでも大変で、僕が9年、先祖代々100年近く

やっているからこそ為し得る、市場との関係性だからこそ仕入れられるものもあります。(品物がない時にふらっと市場に行っても売ってもらえませんよ。当たり前じゃないんです)

 

美味しい野菜を、自分が良いと思う野菜を売りたいと思うのが八百屋として当然の感情で、それを目指して八百屋を続けてきて、他の八百屋に嫉妬をしながらエネルギーをたぎらせてきたのですが、取引先が増えれば増えるほどそこの優先順位を高めることが難しくなる葛藤が増えてきました。

考えの転換が必要でした。

京都で一番イケてる八百屋を目指す西喜商店の現在地はどこにあるかを考えました。

平易ながら、やはりそれはコミュニケーションにありました。

西喜商店の一番の売り物は野菜果物ではなくコミュニケーションであると。

もちろん普通に野菜果物は売るんです。当然。

しかし僕たちの仕事は、

生産者JA組合→市場→八百屋→飲食店

この矢印の部分のコミュニケーションの伝者であると。

季節によって、産地も品種もサイズも見た目も味も値段も変わる、その理由を適切に伝えることが西喜商店の仕事であると。

またそれは一方通行ではだめなんです。

飲食店がこういう野菜果物を求めていることを把握することが大切なんです。

だからとにかく飲食店に寄り添う。いそがしいとお客さまに寄り添うのってめちゃくちゃ難しいんです。でもがんばって寄り添う。ときにはむちゃくちゃ言うてくる飲食店さんもあるしイライラすることもあります。それでも寄り添う。それがコミュニケーションを売り物にするということです。

営業に基本が丁寧にできる八百屋、とも言えるかもしれませんね。

八百屋はこの世で最もシンプルな商売です。基本的には安く仕入れて高く売る、以上の仕事なので。

だからこそ営業を、営業の基本にいかに忠実にやれるかが生命線=イケてる八百屋への正しい道なのではないでしょうか。

 

ということで、西喜商店の売り物はコミュニケーションである、ということを明確にしたい2024年夏でした。

 

 

 

フードロスおじさんコラム 

食品ロス削減(フードロス削減)の活動はやっぱり流行り、ブームでしたね。コロナ禍にやることがなかった学生活動の落とし所だったんですかね?というくらいには、アクションもリアクションも伝わりません。SDGs的なこと全てに言えることは一発逆転の特効薬はなくて、地道に地道に泥臭く泥臭く積み重ね積み重ねの毎日でしか無いのですが、僕はやっぱり人間にはこういうことは向いてないと思うんですよね。古いものはとっとと捨てて新しいものを創っていくことが社会的価値が高い行いとされるのが世の常ですよ。古いものに囚われている以上は前に進めないんです。特に食品ロス削減の活動というのは一見して「ただ食べ物を安売りしてるだけじゃね?」というふうにしかならないので、目に見えないものを継続的に見えるようにすることの難しさを痛感しています。
 そんな中先日マガザンさんと打ち合わせをしたのですが、CORNERMIXだけでも1年間で600kgくらいの行き場がない野菜果物のレスキューが実現できたとの報告を受けました。軒下青果店も同じくらいの数字だったので、西喜商店とマガザンさんだけで1トン以上の廃棄をなくしたことになります。国内の食料廃棄の数から見たら誤差でしかありませんが、京都の小規模事業者二件の取組だけでも黙々と活動を続けるだけでこれくらいの成果が出るのです。この誤差に胸を張ることができる人間であり続けたい。僕は学生時代に打ち上げ花火のお祭りもやりましたが、今でも一番影響を受けた活動は田んぼの泥に塗れた限界集落の支援活動だと自負しています。この世界の経済を動かすのは新しい物を生み出す大きな集団に変わりはありませんし優秀な人ほどそちらに目を向けて世界の安定を保ってもらいたいですが、持続可能な未来を支える地道な活動があるからこそ保たれている均衡もあるわけで、本来人間に向いていない奇特な活動にも感性が騒ぐ一厘一毛の人とまた出会いたいなと思います。