近藤貴馬(西喜商店 四代目)のブログ

京都の老舗青果店、西喜商店の四代目。㈱セガにて6年間営業職を務めた後、㈱地元カンパニーに入社。「地元のギフト」事業の全国展開を担当。営業のみにとどまらず地域に関わる様々な業務をこなし、2015年に京都にUターン。現在はリノベした京町家に住みながら、西喜商店の事業拡大に取り組む。

西喜商店の現在地2024夏

まもなく西喜商店を継いで、八百屋になって9年となります。

売上も安定しており、社員の海部と二人三脚でがんばっております。

年度初めに書いた「京都で一番イケてる八百屋」と言われる回数を増やすことという目標。

書いたときは威勢も良かったのですが、いざ意識しだすとその難しさに悩んでいました。

 

今西喜商店のビジネスモデルは80%がBtoBです。

保育園や飲食店、児童養護施設等への配達です。

まだ件数が少ないときは良かったのですが今や30件を超える取引先があるので

必然的に求められる仕事は、注文に対していかに的確に応えるか、になります。

特に飲食店から求められる注文は「美味しい野菜」ではありません。

美味しいことは大前提として、「その上で」求められることは

 

・自分たちの料理に必要なサイズ(大きいものが良ければ小さいものが良いときもあれば、「ちょうど良いサイズ」が良いときもある。)

・自分たちの料理に合う品種(じゃがいもの男爵、メークインの精度ではない、もっと細かい精度)

・自分たちの料理に合う見た目(傷があっても良いときと悪い時がある。曲がっていても良いときと悪い時がある)

・自分たちの予算に合う価格

・とにかく欠品しない、傷んでいない。

・注文した内容、数量を間違えない

 

これは小売業としては当たり前ともいえることですが、

とにかく野菜や果物等のは品質劣化が早く、在庫の保存にも気を使う必要があるし

(特にトマトや果物の熟度コントロールは気を使っています)

当たり前のこと当たり前にするのがとても難しい商売です。

特に年々暑くなるこの夏は品物を揃えるだけでも大変で、僕が9年、先祖代々100年近く

やっているからこそ為し得る、市場との関係性だからこそ仕入れられるものもあります。(品物がない時にふらっと市場に行っても売ってもらえませんよ。当たり前じゃないんです)

 

美味しい野菜を、自分が良いと思う野菜を売りたいと思うのが八百屋として当然の感情で、それを目指して八百屋を続けてきて、他の八百屋に嫉妬をしながらエネルギーをたぎらせてきたのですが、取引先が増えれば増えるほどそこの優先順位を高めることが難しくなる葛藤が増えてきました。

考えの転換が必要でした。

京都で一番イケてる八百屋を目指す西喜商店の現在地はどこにあるかを考えました。

平易ながら、やはりそれはコミュニケーションにありました。

西喜商店の一番の売り物は野菜果物ではなくコミュニケーションであると。

もちろん普通に野菜果物は売るんです。当然。

しかし僕たちの仕事は、

生産者JA組合→市場→八百屋→飲食店

この矢印の部分のコミュニケーションの伝者であると。

季節によって、産地も品種もサイズも見た目も味も値段も変わる、その理由を適切に伝えることが西喜商店の仕事であると。

またそれは一方通行ではだめなんです。

飲食店がこういう野菜果物を求めていることを把握することが大切なんです。

だからとにかく飲食店に寄り添う。いそがしいとお客さまに寄り添うのってめちゃくちゃ難しいんです。でもがんばって寄り添う。ときにはむちゃくちゃ言うてくる飲食店さんもあるしイライラすることもあります。それでも寄り添う。それがコミュニケーションを売り物にするということです。

営業に基本が丁寧にできる八百屋、とも言えるかもしれませんね。

八百屋はこの世で最もシンプルな商売です。基本的には安く仕入れて高く売る、以上の仕事なので。

だからこそ営業を、営業の基本にいかに忠実にやれるかが生命線=イケてる八百屋への正しい道なのではないでしょうか。

 

ということで、西喜商店の売り物はコミュニケーションである、ということを明確にしたい2024年夏でした。